調査⼿法
定性調査についての詳細はよくわかる「定性調査」で解説しています。
定性調査にはいくつかの手法があります。昔から行われているスタンダードな手法もありますが、それだけでなくインターネットの普及などにより、新たな手法も登場しています。ここでは、その中でも代表的な6つの手法をご紹介します。
フォーカスグループインタビューは、調査課題を検証するのに相応しい一定の条件を満たす人を5~6人集め、モデレーターと呼ばれる進行役のもと、グループ単位で行うインタビュー形式の手法です。
グループあたりのインタビュー時間は120分程度が一般的で、条件が異なる複数のグループ(男性/女性、ヘビーユーザ/ライトユーザー、自社サービスユーザー/競合サービスユーザーなど)を比較することで、属性別の意識・態度の違いを明らかにできます。また、比較的短い期間で属性の違いを探ることができる(たとえば、1日の中で午前・午後・夕方3グループ実施できる)ため、商品コンセプト案・デザイン案などの受容性を検証する場合に用いられることも多い手法です。
同一グループの参加者は、属性が近かったり、使用する商品が同じであったりするなどの理由から、互いの発言に刺激されて自発的な発言が増えたり、発想・視点が広がるといった「グループダイナミクス」が期待できるのがこの手法の大きな特徴です。
デプスインタビューは、インタビュアと対象者が一対一で行うインタビュー形式の手法です。
一人の対象者に対して、実態や意識、購入に至った詳細なプロセスや動機、過去から現在までのブランドスイッチのヒストリーなど、詳細な情報を深掘りすることができ、それらの実態や行動・意識の深掘りを通じて、それまでは気づいていなかった発見が得られるなどして、新たな仮説を抽出することができます。
一人ずつ行うため、周りの人の意見を気にしたり、周りの人に影響されたりせず、対象者自身の気持ちや本音を探りやすいのがこの手法の特徴です。曖昧な回答を深く掘り下げていくプロービングや表層的な回答から深い価値観を探っていくラダリングが重要となる場合や、病気のことなど人前では話しにくいセンシティブな内容を扱うときにも有効です。
※デプスインタビューについてはこちらの記事「デプスインタビューとは?手法の特徴、メリット・デメリット~本音を引き出すコツまで、わかりやすく解説!」で詳しく解説しています。
エスノグラフィは、対象者の承諾を得たうえで、日常生活行動(掃除、洗濯、調理、洗顔、歯磨き、メイク、など)に同行させていただき、対象者が無意識に行っている行動のクセやパターン、商品の使い方の特徴などを近くから観察し、気になった行動についてその場でインタビューをする調査手法です。
対象者が普段行っている何気ない行動手順や行動パターンの中に、無意識に感じている不安や不満、商品使用時の期待やニーズなどを、観察とインタビューを通じて発見することができます。
対象者自身は特に意識しているわけではないため、言われなければ気づかない場合が多く、観察をするインタビュアは、「商品を使う時に、・・・・・のようにしていましたが、どうしてそのような使い方をしているのですか?」といった質問をします。対象者は、質問されて初めて自分の普段の行動のクセやパターンに気が付くこともあり、なぜ、そうしているのかを説明します。そのようにして、対象者自身も気づいていなかったことが、行動観察とインタビューによって発見できるのです。
エスノグラフィによって重要な発見、示唆を得るためには、(1)対象者の無意識な行動のクセやパターンに、観察者がいかに気づくこと、ちょっとした何気ない行動を見逃さず、「おや?」と感じること、が重要です。さらに、(2)その行動の裏にどのような要因、気持ち、背景があるのかを問いかけ、探り出すことが重要です。
行動を観察する方法はいくつかあります。
調査対象者の自宅に訪問して行うインタビューです。これに行動観察が加わればエスノグラフィになりますが、一般的なホームビジットは必ずしも行動観察を行うわけではありません。調査のテーマが住宅、住宅設備、家電、キッチン用品、自動車などの場合、ご自宅で使っている商品の様子や、商品を使用する空間・環境を見ることで、使用実態を詳しく知ることができるため、ホームビジットが有益な調査手法となります。
対象者は、一人の場合もありますが、商品が家族共用のものであったり、家族の意見も聴きたいような場合は、あえて夫婦同席、親子同席として、家族の意見も一緒に聴取する場合もあります。たとえば、調査テーマとなる商品がキッチン用品の場合、そもそもキッチンはどのようになっているのか、商品はキッチンのどのような場所に置かれ、どのような使い方をされているのか、キッチンの中で使いやすいかどうか、といったポイントを、実際の環境を間近に見たり、詳しく質問することで、よりリアルに把握することができます。
また、調査テーマ以外の生活用品やインテリア、趣味の用品、ファッションアイテムなどを見せていただくことで、ターゲット層の生活実態やその背景にある意識、商品に求めるデザイン、機能を、詳細に把握することができます。
調査対象となる一般生活者に実態や意識についてインタビューをするのではなく、特定のテーマのもとに、問題点の抽出や、その解決施策案の抽出、その他のアイディア抽出などを行う場合は、生活者や、商品開発プロジェクトのメンバーを集めて、ワークショップを行うことがあります。定性調査の手法としてのワークショップは、定量調査やインタビュー調査などで抽出した多くの問題点や課題をもとに、生活者、開発プロジェクトメンバーがそれぞれに集まり、あるいは一緒に集まって、様々な立場から改善のアイディアを発散させ、収束させます。
生活者同士が考えるだけではなく、時には作り手・商品開発者と、ユーザーである生活者が一緒にディスカッションをすることで、それぞれの立場からの意見を聴き、刺激となり、従来にはなかった発想の転換が行われる場合もあります。
ワークショップでは、発想を広げるために、言葉によるディスカッションだけでなく、自由な発想を促すために、ゲーム性を持たせたり、ドローイング、デザイン性を持たせた表現など、言葉や文字だけではない情報を共有することもできます。
SNSのような、ネット上のコミュニティを通じて発言をしあう手法は、MROCと呼ばれています。ただし、MROCで利用されるコミュニティは、一般的なSNSのようなオープンで誰もが自由にコミュニケーションできるものではなく、リサーチを目的に開設したクローズドで期間限定のコミュニティとなります。期間限定のクローズドなコミュニティの中で、その調査テーマに合う特定の条件の対象者だけを集めて参加者登録し、一定の期間、MROC運営メンバーが投げかけるトピック(ディスカッション・テーマ)にそって投稿をします。
コミュニティの参加メンバーである対象者は、スマートフォン、タブレット、自宅のPCなどを使って、自由にいつでも投稿ができます。
コミュニティの開設期間は2~3週間程度の短いものから、数か月に及ぶものまで様々です。通常のインタビューでは時間が足りないような多くのトピックがある場合は、長期間に様々なテーマについて投稿してもらえるMROCが有効です。そのため、MROCの情報量は非常に多くなります。
コミュニティの進行役となるMROCのインタビュア(コミュニティ・マネージャーと呼ばれる場合があります)は、あらかじめ用意したトピックをメンバーに投げかけるだけではなく、気になった投稿に対して、直接投稿者に質問をして深掘りをします。
また、オープンではなくクローズドで期間限定のコミュニティであるため、特定の商品のホームユース・テストと組み合わせて、毎日の使用評価を投稿してもらうこともできます。
今回は定性調査の代表的な手法について紹介しました。インテージクオリスでは、様々な定性調査手法を用いて課題解決のお手伝いをしています。「このような課題があるが、どのような調査を行えばよいか」などのお困りごとがあれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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