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リサーチ知識

定性調査でのインタビューフローの作り方 ~消費者の本音を引き出すためには?~

2023.04.13
株式会社インテージクオリス リサーチ&インサイト部 五十嵐優美

定性マーケティングリサーチの進め方 – 調査を成功、そしてマーケティング課題を解決するために重要な「調査企画」のノウハウ」や「定性調査の対象者の集め方 – 対象者なしで調査は始まらない!」で調査企画、リクルートについて紹介してきました。今回はインタビューの下準備である「インタビューフロー」について紹介します。

インタビューと聞くと、どのようなイメージをお持ちでしょうか。このような会話を思い浮かべる方もいるかもしれません。

インタビューのようになっていますが、「定性調査のインタビュー」を適切に行うと、対象者からもっと詳しく情報を引き出せます。実は定性調査でのインタビューは上の画像のような「インタビューフローに書いてある質問を対象者に投げかけて、答えてもらって終わり」ではありません。会話の想定をし、インタビューフローをベースにして柔軟にインタビューをすると下の図のようになります。

実際のインタビューではインタビューフローのように質問を区切りながら聞く事はあまりありません。自然な会話の中で知りたい事柄が出てくるよう、話を進めていきます。インタビューフロー通りに話が進むとは限らず、後で聞きたい内容の回答が話の流れで出てくる事もあります。インタビューフローは質問の目安であり、それに頼りきりでは良い定性調査はできません。インタビューの前にその商品を実際に試したり、自分が作ったフローを元に自分自身へインタビューをしてどのようなパターンの回答が来ても対応できるように準備をします。

インタビューフローとは「調査で知りたい事を明らかにする質問」を記載したもの

インタビューフローを適切に作ると、対象者から多くの事を聞き出せます。ここからは具体的なインタビューフローの作成方法について紹介します。調査企画やリクルートで、ある程度方向性が固まったらインタビューフローを作成します。インタビューフローとは質問の流れや時間配分を記載し、どの順番でどのように聞けば良いのか整理したものになります。

その際、調査で明らかにしたい事や何が分かればネクストステップへ進めるのかをはっきりさせておき、あらかじめ知りたい情報を想定しておくと、フロー作成時に聞くポイントが明確になります。また、インタビュー時は知りたい情報に対して何をどこまで詳しく聞くか判断材料の一つになります。

フローは図のように「大きなテーマ(調査項目)」、「具体的なインタビュー項目(具体的な質問)」、「その質問を投げかける目的(狙い)」の3つに分かれています。具体的な流れは次項で説明します。

インタビューフローの流れ

下記の図が「大きなテーマ(調査項目)」の定番の流れです。まずはウォーミングアップとして対象者の名前、大まかな居住地、家族構成、最近ハマっている事や趣味を話してもらいます。インタビュアーと対象者は初対面ですし、お互いのことを知り、会話をする気持ちになってもらうためにアイスブレイクとして行います。

その後、対象者の生活全般、テーマに関する行動、その行動をする際の意識や価値観、テーマに関する商品案などの評価と構成する事が多いですが、これには理由があります。身近な話題から検証したいメインテーマで聞き、対象者の周辺情報、背景情報、生活情報を把握した上で本題に入ります。そうすると、対象者から聴取した行動の前後の繋がりや発言の意図が分かりやすくなります。
また、発言を深堀りする時に、前後関係を加味した突っ込みがしやすく、後ほど行う分析でも納得感のある説明ができるようになるからです。

作成の手順

フローを作成しようとした時、いきなり具体的な質問文は作らずに下記の図のような流れで進めます。

まず初めに課題を意識して知りたい情報を整理します。知りたい情報とは調査目的、調査課題に沿って、「こんなことが知りたい」「こうなんじゃないか」と考える事で導き出され、整理されたものです。そして、そこから得られた情報が何に役立つのか、どうやって活用するのかを意識するようにしましょう。また、調査テーマの対象である消費者の行動を想像しておく事も必要です。

次に大きなテーマ(調査項目)がいくつに分かれるかを考え、作成します。例えばウォーミングアップ、対象者の生活全般、対象カテゴリの利用実態、対象商品の利用実態、コンセプト評価・・・などです。
ウォーミングアップで対象者に自分について話す練習をしてもらいます。いきなり具体的な事柄について話してもらおうとしても、普段自分について話す機会のない人にとっては難しいからです。
その後、事実を答えるだけで良い問いで現在の実態を語ってもらい、少し考えたり思い出す必要のある過去の行動を振り返ってもらいます。さらに、無意識に気づいてもらったり、より考えてもらう話をして対象者の意識や気分を掘り下げ、本音を引き出します。このようにインタビューでは感情や価値観を言語化してもらう必要があり、頭の整理がしやすい、答えやすい聞き方で問いかける事が重要です。

大きなテーマが固まったら、それに対し、知りたい情報を元に具体的な質問文を作成します。

「商品Aのパッケージのリニューアルにあたってどのように商品特徴を伝えれば買ってくれそうか、その商品を使う事でどんな気持ちになれるか知りたい時」の例を元に説明します。
この知りたい情報の例を質問にすると、「商品Aのどのようなところが気に入っているのか」「その良さがある事で気持ちはどうなるのか」になります。場合によっては対象者にコンセプトイメージやコンセプト文を提示するため、そのタイミングも記載します。

最後にその質問を投げかける目的を記載します。そうする事で調査課題をクリアにするための十分な情報が出てくるまで掘り下げられます。インタビュー時、どうしても話が本題ではないところに逸れてしまう事があるため、それが起こった時に軌道修正をしやすくなります。また、表面的な回答しか返ってこない時、確認ポイントを軸にする事で深堀りできるようになります。

質問の目的や注意点を記載したら、最後に全体の流れを確認し、時間配分の調整を行えば完成です。

調査でどんな事を知りたいかに基づいてインタビューフローを作る事が重要

今回はインタビューフローについての概要や作成の流れについて解説しました。インタビューフローがあると調査目的に沿って適切な質問を対象者に投げかけ、課題を解決する調査を行えます。

インテージクオリスでは、様々な定性調査手法を用いて課題解決のお手伝いをしています。「このような課題があるが、どのような調査を行えばよいか」などのお困りごとがあれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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