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リサーチ知識

対象者リクルートの品質担保 ~履歴確認編~

2023.03.17
株式会社インテージクオリス リサーチ&イノベーション部 佐藤友昭

はじめに ~対象者を集める過程で「過去履歴」を参照する~

市場調査業界では調査参加者のことを「対象者」と呼びます。定性調査では数値で表現される量的なデータではなく、数値では測ることができない嗜好や行動など、質的なデータをインタビューなどによって集めます。

定性調査の対象者をどのようにリクルートしているのかについて以前記事でまとめましたが、対象者を集めるためにインテージクオリスが行っている品質担保が、「履歴確認」です。

履歴確認の具体的な内容や、履歴確認をしなかった場合に起こりうるトラブルなどを紹介してまいります。

*対象者リクルートに関する記事は、こちらをご覧ください。

定性調査は日々行われている

そもそも、履歴確認とは何でしょうか。

定性調査は毎日、様々な分野や業界をテーマに行われています。そして、対象者によって生活実態が異なるため、チョコレートの対象者条件に合致する人や、化粧品の対象者条件に合致する人がいるなど、様々です。その中で複数の業界にまたがってインタビューを受けた経験のある方は多いです。また、同じ商品カテゴリのテーマに複数回参加されている方もいらっしゃいます。
対象者を募集する際に、過去の参加履歴をチェックすることを履歴確認といいます。

㈱インテージ、インテージクオリスで実施したインタビューの対象者情報は、参加履歴をデータベースで保管していて、誰がいつどのインタビューに参加したのかが分かるようになっています。

インタビュー慣れをした人が参加することで起こりうるリスク

では、インタビューの参加経験が多いことで起こりうるトラブルについて、紹介していきます。

インタビューは、インタビュアーやほかの対象者など、知らない人と話すことが前提となります。初めてインタビューに参加する人は、緊張したりうまく話せなかったりする可能性があります。逆に、インタビューに参加したことがある人は、インタビュアーや、ほかの対象者がいる状況に慣れているとはいえ、緊張することなく話せる方もいらっしゃいます。

しかし、多くのインタビューに参加している方は、「調査慣れ」によって次のような発言をする可能性があります。

  • 顔色をうかがう発言

インタビューに多く参加している方は、またインタビューに呼集されたいという意識から、自分自身が思っている意見ではなく、場の雰囲気を壊さないためにほかの対象者の意見に合わせたり、クライアントに都合の良い意見しか言わないなど、インタビューの流れや内容を意識した発言をする懸念があります。

  • 他人事な発言

対象者によっては、「若い女性は嫌いだと思う」「おじさんを対象とした商品だ」のように、主語がご自身ではなく広義な発言をされることがあります。インタビューに慣れると、自身の感想ではなく「市場的に(世間的に)どうか」という視点で発言される懸念があります。

「その場だからこう答える」ではなく、「対象者自身がこう思うからこう答える」という対象者の本音を聞くことが定性調査において必要です。

履歴確認によって防げること

履歴確認では、ある候補者が過去にどんなインタビューに参加した経験があるかを参照し、参加可否について判断をしています。例えば、直近1年間の同じクライアントやブランドのインタビュー参加経験者を除くことで、以前のインタビューの先入観を除くことができたり、競合クライアントの調査参加経験者を除くことで情報漏洩を防止したりすることができます。

また、過去の参加履歴以外にも、データベースにはいろいろな情報を記録することができます。

続いては、データベースに対象者情報を詳細に記録しておくことで防げるリスクについて例を挙げて紹介していきます。

例えば、お酒のインタビューでは、題材によって試飲をしていただく場合があります。その際に、試飲のお酒を飲みすぎて泥酔し、インタビューを阻害するような言動や振る舞いをされた方がいた場合、データベース上にその旨を記録として残すことができます。

記録を残すことによって、今後、再びお酒関連のインタビュー候補者としてリストアップされた際に、過去に“インタビューを阻害したことがある”という記録を元に参加可否判断を行い、懸念があればNGにすることができます。

また、インタビューでは積極的に発言でき、自分自身について話してくれることが重要で、リクルート時にも積極的に発言することに協力いただいたうえでご参加をお願いしておりますが、人によってはインタビュー中に自分の意見を言えない方もいらっしゃいます。インタビュアーも対象者に積極的に話題を振ったりと工夫をしていますが、どうしてもインタビュー中発言が少ない方はデータベース上にその旨を記録する場合があります。

記録を残すことによって、「〇〇という商品の魅力を時間いっぱい話してもらいたい」「●●の商品を買った経緯について、詳しく深掘りしたい」といったような対象者が知っていることや経験したことを積極的に話していただく必要のあるインタビューの際に、参加NGとして除くことができます。

履歴に情報を記録しておくことで、インタビューに参加いただいた方から実のある意見を聞くことができるよう品質の向上に努めています。

まとめ

今回は、対象者を集める際に必ず行っている「履歴確認」について紹介しました。定性調査では、対象者を集めることが肝となります。単に参加条件に合致しているだけでなく、その候補者が過去にトラブルをしていないか、調査慣れをしていないかを参照することで、調査自体の品質担保を担っています。

インテージクオリスでは、どのようなテーマで、どんな人をどれくらい参加いただきたいかといった調査の設計部分からリクルート、インタビュー当日のサポートから調査の分析まで幅広く承っております。「題材にしたいテーマは決まっているけど、どんな人を集めたいか決まっていない」「どれくらいの規模感で調査ができるのか知りたい」といったような疑問や、定性調査のご依頼はお問合せフォームからお待ちしております。(お問合せフォームはこちら

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