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調査⼿法

消費者の潜在意識を深掘り 新手法「ワードポーカー」

2023.02.28
株式会社インテージクオリス リサーチ&インサイト部 リサーチプランナー 村田 万由子

みなさん、普段インタビュー調査を実施したり見たりしていてこんなふうに思われたことはないでしょうか。

「限られた時間内で、生活者が言語化しにくい価値を十分に聞き出せるのだろうか…」

「自分が担当している商材は、店頭でファーストインプレッションで購入される商材のため、生活者に「商品の価値」を聞いても表面的でありきたりな答えが多い…」

定性インタビューでは、対象者の本音や潜在的な意識を引き出すため、商品を何かに例えてもらったり、ビジュアル等を通じて表現してもらう「投影法」と呼ばれる手法を用いることがあります。ただし、商品購入までの検討時間が短いカテゴリーについて、ファン以外はそのカテゴリーのことを普段そこまで考えているわけではないので、限られた時間で深いお話を聞くにはテクニックが必要です。今回は、そんな商材にぴったりの、インテージクオリスが新しく開発した投影法、「ワードポーカー」についてご紹介します。

【新手法「ワードポーカー」は本音を言語化しやすくする手法】

調査対象商品の価値を表すワードがプリントされた数十枚のカードを用います。対象者にはカードゲームのようなやり取りを通じて、自身にとって重要な価値のカードを5枚揃えてもらいます。ゲーム中や最後に、カードの取捨選択理由や価値観ワードについてインタビュアーが深掘りすることで、普段は言語化しにくい本音まで明らかにしていく手法です。

価値観カード例

ワードポーカールール

※デプスインタビューでの活用例。2on1、FGIへの応用も可能です。

① 手元に5枚カードを配ります。

② 相手に引かれたり場のカードから引くことを繰り返し、自分にとって重要な5枚をそろえます。

③ 5枚のカードを順位付けし、説明をしてもらいます。

④ もし最適なワードがなくても、②を繰り返す中で自分の気持ちが明確になり自分にとっての言葉を導き出すことが容易になります。

カードに記載されている価値観ワードは、㈱インテージのmorevois(※)というサービスで使用している選択肢をベースとしています。ワードポーカーでは調査課題やご要望に応じて追加変更します。

※morevoisとは

購買履歴から条件対象者を抽出し「カテゴリー」や「ブランド」の“リアルな”ユーザーに、「カテゴリー・ニーズ」や「商品の選択基準」等を聴取し、「消費者の構造」や「購買の背景・理由」などを分析するサービスです。そこで使用される選択肢は過去の膨大な調査票を集約し厳選したものとなっております。

【ワードポーカーの強みとは?】

ここからは「冷凍餃子の好きなところ」というお題でワードポーカーを行った社内調査の事例をご紹介しながら、ワードポーカーの強みをご紹介します。

対象者が普段言語化しない、潜在的な意識についても聞くことができる

カードのやり取りを行いながら、そのカードを選んだ理由、捨てた理由などを聞いていくことで、対象者が普段言語化しない、潜在的な意識についても聞くことができます。通常インタビューでは対象者は質問されたことへの「結論」だけを話そうとします。一方で、ワードポーカー中にどのカードを取捨選択するか悩んでいる姿は「結論を出すまでに悩んでいる最中」さながらです。その悩んでいる最中をカードのやりとりで可視化してヒアリングできます。

★事例★

対象者Aさんが「ストレスを和らげる」のカードを場に捨てるかどうか迷っている様子だったため、インタビュアーがその理由を聞きました。Aさんは「半年くらい前から餃子が休日スイッチになっている。お休みの日に餃子を食べることで「はぁ~お休みだ~」という気持ちになる。餃子=休日のイメージ」と回答。通常のインタビューではAさんからは休日に餃子を食べるという話は聞けましたが「臭いが気になるから」といった事実ベースの回答でした。ワードポーカーを通じて餃子がリラックスのお供になっているという新しい価値観や、餃子がAさんにとってどのような位置づけであるのかを知ることができました。

複数ある価値観の聞き漏らしや、深掘り不足を防ぐことができる

通常のインタビューだと、ある価値観に対する話のみが膨らんでしまい、それ以外の要素を対象者が思い浮かばなくなる可能性があります。一方で、ワードポーカーでは、重要な価値観が5枚可視化されることにより、インタビュアーが時間配分しやすく、それぞれについて十分に内面をヒアリングできます。

★事例★

対象者Bさんは、餃子といえば「子供の頃食べたおばあちゃんの手作り餃子」。通常インタビューではおばあちゃんの餃子にまつわる思い出や、「昔から家族みんなで食べてきたので、家族でワイワイ食べるものだと思っている」などのお話を熱弁してくれ、餃子からイメージすることは他には無いとの発言でした。

一方で、ワードポーカーでBさんが揃えたカードは「懐かしい味がする」「みんなで食べられる」といった通常インタビューで聞けた価値以外にも、「調理が簡単にできる」「買い置きができる」「地域の食材を使っている」があり、これらが普段食べている冷凍餃子のお気に入りポイントであることがわかりました。

面白いことに、Bさんにそれぞれのワードの重要度を聞いたところ、「懐かしい味がする」「みんなで食べられる」:50%、「調理が簡単にできる」「買い置きができる」:40%、「地域の食材を使っている」:10% とのこと。通常インタビューでヒアリングした「おばあちゃんの餃子」に関する価値以外が、50%もの割合で潜んでいたことがわかります。このような聞き漏らしを防ぐことで商品開発やコンセプトづくりにおいて、重要なポイントを見逃さない、すでにある仮説をブラッシュアップするきっかけにもなるでしょう。

【他の投影法との違いとは?】

対象者の想像力や思い入れの強弱に左右されずスムーズにインタビューできる

言語連想法や擬人法、ビジュアルを用いた投影法は、回答の自由度が高く対象者の思っていることをバイアスなく聞けることがメリットですが、対象者自身の言語化能力や想像力が無いとうまくヒアリングできない場合があります。

例えば、普段から調査の対象物についてあまり考えていない対象者が、いきなり「何かに例えてください」と言われても、調査の限られた時間の中ではうまく表現できない場合も多くあります。

一方で、ワードポーカーでは、価値観ワードが書いてあるカードを活用することにより、対象者自身の想像力や思い入れの強弱に左右されず、スムーズにインタビューできます。

「え~選んでいる理由はこれといって思いつかないな」とインタビューに答えにくい時もカードの言葉を見ながらゲームをしていくことで「あ、自分にとって大切なのはこれかも」という気づきがあり、インタビューで十分にお話をしてもらうことができます。最初は「うーん」と悩んでいた対象者も、ゲームが終わる頃には「場にあるカードでは満足できないから白紙に書きたい!」と、ご自身の価値観を表現してくれることも多いです。

特に、「商品サイクルが短い」、「店頭でのファーストインプレッションで購入を決める」、「検討期間が長くない」などの特徴がある商材について、ワードポーカーはとてもオススメです。

言葉のニュアンスをより深掘りすることに適している

ビジュアルを用いた投影法は回答の自由度が高い分、調査の対象物やブランドに対する「気持ちやイメージ」を表現してもらうのに適していますが、ワードポーカーは言葉のニュアンスをより深掘りすることに適しています。

★事例★

対象者Cさんは、通常インタビューで普段どのように餃子を食べているかという質問に対して「カンタン酢と醤油で食べるのが好き」と語ってくれました。ワードポーカーでは餃子を好きな理由として5枚目に「アレンジを楽しめる」を選び、それについて深掘りすると「餃子自体の味がシンプルだから、カンタン酢、お醤油、おろしポン酢、ケチャップでも何でも合う!」という答えが出てきました。ワードボーカーをすることで、彼女にとってカンタン酢と醤油で食べるのは「アレンジ」であったことがわかり、いろいろと味変しながら食べられるベーシックな餃子が好きという価値観が浮き彫りになりました。このように対象者の言葉の内容をよく理解することは、例えば「生活者にどのように訴えかければより受容されるか」というコミュニケーション施策に有効です。

【最後に】

今回は新手法のワードポーカーについて紹介しました。カードにプリントする価値観ワードを適宜編集したり、インタビューフローの流れに合わせてゲームルールをアレンジするなど、課題解決にぴったりの方法でご提案することも可能です。ぜひご相談ください。

お問い合わせはこちら ↓

https://www.intage-qualis.co.jp/contact/index.html

■調査実施概要

調査実施日:2022年11月7日(月)~11月15日(火)

調査対象者:株式会社インテージクオリス 社員 5人

調査手法:一人当たり通常オフラインインタビューとワードポーカーを使用したインタビューを実施

調査主体:株式会社インテージクオリス

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