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デジタルでオンライン会議やワークショップの常識を変えろ! DIGI-LAS開発秘話 【社長対談vol.1】

2022.01.12
株式会社インテージクオリス リサーチ&インサイト部

【社長対談 vol.1】
株式会社アイシン
グループ技術開発本部 
解析技術部 基盤技術開発室 DA開発グループ
主査 中村 正樹氏

株式会社インテージクオリス
代表取締役社長 小島 賢一

アイシン様は自動車部品事業で培ってきたものづくりの生産性を高める技術をもとに、新たなビジネス分野の開拓や、新しい価値の創造を目指しておられます。また、多様化が進む社会に向け、個人の個性を活かし、コミュニケーション観点の生産性を向上したいという思いをお持ちでした。(株)インテージクオリスは、コロナ禍で社会環境が大きく変わる中、定性調査会社としての強みの一部であるワークショップをオンラインで実施できないか模索していました。そこで、音声認識システムの知見を持っていたアイシン様と、言葉をベースとした定性調査の会社である(株)インテージクオリスがタッグを組み「DIGI-LAS(デジラス)」※1の開発に至りました。
今回、DIGI-LASの開発の経緯や苦労話、こだわったポイントをご紹介します。

※1「DIGI-LAS(デジラス)」とは
(※DIGI-LASは2023年4月30日をもってサービス提供を終了いたしました)
オンラインワークショップに特化したアプリケーション。ビデオ通話とホワイトボード機能が一体となり、さらにデジタル付箋や画像検索機能などワークショップに必要な機能が一つになった新時代のツールです。メインルームとサブルームの設定が可能で、オフラインでのワークショップをオンラインで再現できます。

(左から株式会社アイシン:中村様、株式会社インテージクオリス:小島)

■ホワイトボードツールだけだと、オフラインのワークショップは再現できない

―どのような思いがDIGI-LASの開発のきっかけになりましたか。

小島:コロナ禍でオフラインでの対面の調査が全て中止になってしまい、今まで受注していたワークショップの案件も対応できなくなってしまいました。海外のオンラインホワイトボードツールとビデオ通話ツールを組み合わせて、ワークショップを再現できるか試してみましたが、どちらか一方のツールだけを見てしまっていたり、恐る恐る会話していたりと本来のワークショップが再現できないもどかしさがありました。また、ワークショップはチーム毎に分かれディスカッションし、最後に全体発表という一連の流れがあり、どうしてもその再現ができませんでした。

―どうして両社はDIGI-LAS開発に至ったのでしょうか。

小島:定性調査全般で言えることですが、ワークショップで対話することは、結局は言葉の世界だと考えています。以前、中村さんからYYProbe※2の結果を発言単位でボードに貼り付けていくものをご紹介いただいたことがあったので、音声認識システムの知見を持っていらっしゃる中村さんにご相談しました。また、アイシンさんがホワイトボードツールとしてYYKnowledgeBoard※3を提供されているのもご相談したきっかけです。

中村:そうですね。私たちが開発していたYYKnowledgeBoardはホワイトボード機能だけでした。DIGI-LASでメインルームと呼んでいる全員が集合でき、発表したり、歓談できるような機能はなかったので、ベースはYYKnowledgeBoardですが、小島さんにご相談いただく前とDIGI-LAS開発後では全然違うものになったと思います。また、弊社ではYYProbeでナレッジを蓄積した後に、それを使ってナレッジを交換し合う「場」が必要だと考えていました。オンライン上でミーティングや会議を開催し、全員で議論ができるようなツールを作りたいと思っていたところに、小島さんからオンラインでワークショップができるツールを作りたいというお話をいただき、共同開発を進めました。

当時はコロナ禍、オンラインで何かすることが急速に普及し始めていたため、開発のスタートが切りやすい時期でした。また、チャンスというよりも今後当たり前になっていくツールだろうなという意識でした。

※2 「YYKnowledgeBoard」とは
リモート会議で利用できるオンラインホワイトボードツール。文章、画像、動画、資料を一つのボードで共有でき、音声認識を使って音声でテキストを入力することも可能。ビデオ通話とホワイトボードが一体化しているので、別々のソフトを立ち上げる必要がない。

※3 「YYProbe」とは
会話をリアルタイムでテキスト化する音声認識アプリ。発言一つ一つの音声とテキストを保存しながら、会話の流れを表示し、さらにビデオ通話の音声も高精度に認識が可能。

■ビデオ通話とホワイトボードを同時に成立させることの難しさ。それでも実現させた開発者の思い

―DIGI-LASを開発するにあたり、具体的にどの点が難しかったか教えていただけますでしょうか。

中村:多人数のリアルタイム情報共有ツールは、使用する人のパソコンのスペックや、ブラウザの種類、バージョン、通信環境の問題もありますので悪条件下でもできるだけサービスを成立させることが苦労しました。データの通信容量も抑えなくてはいけません。いろいろな要素が複雑に絡み合ってくるので運用も大変だと。そもそも多人数のビデオ通話とオンラインホワイトボードを同時に成立させることが初めての取り組みだったので、苦労の連続でした。

―どのような流れで開発は進行していったのでしょうか。

中村:今回はアジャイル的な開発をさせていただきました。仕様書をビシッと決めて期間を決めて作りきるというよりは、小島さんからなんとなくエッセンスをいただいて私たちで試行錯誤しながら、小島さんに見ていただいてというのを繰り返した感じかなと思います。

小島:今まで私が開発に関わってきたツールは、ある程度の期間を設けて、仕様もしっかりと固めて、それを作ってもらい、できたものを確認していくという方法でした。今回は、中村さんがおっしゃったようにアジャイル的にやらせていただき、弊社としてはとてもやりやすかったです。例えば、急に何か思いついたこともすぐにお伝え出来ましたし。ただ中村さんたちをはじめとする開発してくださっている方は大変だなと思ってはいました。要望を常に聞いていただき「ありがたい」の一言ですね。

中村:小島さんにつきっきりで話を伺うことはせず、節目ごとに開発中のDIGI-LASを見ていただきお互いのイメージを共有しながら、ツールに落とし込んでいくという点がとてもやりやすかったです。きっちり仕様を決めて開発するよりも、柔軟に対応することができました。

インテージグループ内で開催したオンラインワークショップ時のメインルーム

中村:メインルームが素晴らしいと思いますね。メインルームに集まったときに、チーム毎に区切られていて、一体感や結束感を醸し出していると感じます。すごくいい雰囲気を出していて、ここはひとつのチームなのだな、ということが一目で分かります。メインルームには掲示物があって、これから説明することや内容が一目で分かるので、「あ、これからこういうことするんだな」ととても分かりやすいです。その次にサブルームに行くと、みんなで「さあやるぞ」という気持ちを一つにできますよね。

小島:そうですよね。ルームが分かれていることで、サブルームでのディスカッションとメインルームでの共有や発表会が可能ですし。オフラインで当たり前だったことでも、オンラインで実現することは意外と難しいので。一同で集まって行うことはイベント感があると思いますが、DIGI-LASではオンラインでも熱量を維持でき、同じような盛り上がりを感じられますし、「みんなで何かを一緒に」が実現できますね。良いアウトプットにつながるのではないかと思っています。 こだわったところの2つ目は、画像でイメージをすぐに共有できるところです。ぱっと思いついたイメージを画面共有する必要もなく、すぐにサブルームのボードへ貼り付けて伝えられるところです。しかも、オフラインのワークショップの時の課題もそれで解決できています。オフラインの時は自分のイメージを画像で伝えたいときは印刷するわけにもいかず、スマートフォンで検索して見せるのにも時間がかかるし記録として残せないので。

インテージグループ内で開催したオンラインワークショップ時のサブルーム

■ワークショップだけではなく、日々の会議やエンジニア向けでの利用もできる活用の幅広さ

小島:ワークショップ以外でも日々の会議でも使えると感じました。どうしても会議って声の大きい人がしゃべって終わってしまうことがあり、若手や控えめな人は発言しにくい雰囲気がある。でも、DIGI-LASの付箋機能を使って、最初の3分で思っていることを書き出しましょうとすると、どんどんアイデアや意見が出てきますよね。書き出した付箋を整理しながら会話できるので、発言を可視化することもできます。

中村:私たちの開発チームは開発用のボードを設定して、毎日そこで意見交換しています。オンライン上に開発部屋があるようなイメージです。課題の共有やデータの受け渡しは、付箋や資料をボード上に貼ってそのまま残しておけるので、メンバーが来たらそれを見て編集したり、ダウンロードしたりするような使い方をしています。エンジニアの方もチーム開発で使えると思います。オンラインでかつデジタル化しているからこそデータを蓄積し再活用することもできます。

「言葉」をきっかけにアイシン様と(株)インテージクオリスで始まった協業。
次号では、音声認識や今後の展望についての対談をお伝えします。

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