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次のテーマは「データの蓄積」「メタバース」「SDGs」 協業のさらなる深化に向けて【社長対談vol.1】

2022.02.16
株式会社インテージクオリス リサーチ&インサイト部

【社長対談 vol.1】
株式会社アイシン
グループ技術開発本部
解析技術部 基盤技術開発室 DA開発グループ
主査 中村 正樹氏

株式会社インテージクオリス
代表取締役社長 小島 賢一

アイシン様は自動車部品事業で培ってきたものづくりの生産性を高める技術をもとに、新たなビジネス分野の開拓や、新しい価値の創造を目指しておられます。一方で、個人の個性を活かし、コミュニケーション観点の生産性を向上したいという思いをお持ちでした。そこで、音声認識システムの知見を持っていたアイシン様と、言葉をベースとした定性調査の会社である(株)インテージクオリスがタッグを組み協業に至りました。 今回はデータの蓄積、メタバース、そしてSDGsに関する未来への展望についてご紹介します。

(左から株式会社アイシン:中村様、株式会社インテージクオリス:小島)

■新たな協業の可能性①「データの蓄積」

―中村さんはアイシン様の中でも新規事業創出を担当されているとお伺いしましたが、今後取り組んでみたい事業や、新たに開発してみたいデジタルツールは何かお考えですか。

中村:オンラインミーティングも含めてツールはデジタルになったものの、参加している人が変わっていない点が問題だと感じています。対面からオンラインになり、仕事の仕方は大きく変わりましたが、実際に話されている内容は対面の時と大きく変わってはいません。ツールは進化している一方で、人は停滞しているように感じています。デジタル化の効果を高めるためには利用者がデジタル化の意味や効果みたいなものを意識し勉強する必要があると思います。
例えば、企業の会議は同じメンバーで行うことが多いと思いますが、社内の知らない人の経験が役に立つ場合などがあります。社内のナレッジがデータ化されていれば、AIが膨大なデータからその場ですぐに必要なナレッジを提示したり、人をマッチングしたりして課題解決できるようになるはずです。そのためには、自分の知識や経験の価値とデータ化することの意味を理解する必要があると思います。
また企業内の教育プログラムはどの企業にもあると思いますが、アイシンに来ている講師の先生に音声認識アプリ「YYProbe」を見ていただいたことがあります。すると「当日のやり取りを文字にすることは有効でもちろん楽にはなるのだが、受講者に1週間前や、1カ月前にこのツールを渡して、日常的な仕事のやりとりを全部取ってもらい、それをデータ化したものを事前のインプットとしてもらえると、講義の効果も変わってきそうだ」というコメントをいただいたことがあります。データ化して、次に使っていくという流れを作っていけると色々と変化させることができるかなと思います。

小島:それと近いようなことを日々の業務でも感じています。例えば新しい依頼を受ける時に、依頼してきたクライアントが行った過去の調査結果や知見も全てインプットしてもらった上で取り組めると、より新しいことを質問できたり、回答を先読みできたりするので。少し強引な感じもあり、現実問題なかなか言えませんが、定性調査の案件を全て任せてもらえればクオリスにナレッジも溜まっていき、クライアントにとってもプラスになる調査をご提案できるようになると思います。

中村:度々ワークショップやインタビューを行っていると思いますが、それらのデータの再利用はできないのでしょうか。もしそれができればクオリスさんとしてのナレッジも溜まっていき、より質の高いワークショップやインタビューをできるようになっていくと思うのですが。過去に複数社で実施したデータあれば、「業界全体としてはこのような傾向だが、今回の結果はこうだ」と示すこともできるはずです。オープンデータと比較するよりも、生声のデータを持っていてそれと比較していると示せた方が、より強みになる気がします。

小島:そうですね、個別の案件では少し難しそうですが、可能性がありそうですので協業してくれそうなお客さま企業にお話をしてみようと思います。

■新たな協業の可能性②「メタバース、仮想現実」

中村:実はもう一つ考えていまして、最近よく話題に出る「メタバース」についてです。Facebook社がMetaに社名を変えて話題になりましたね。対面もオンラインもそれぞれの良さがありますが、例えばこのインタビュールームがすごくリアルに近い形で「仮想空間」になるイメージです。ワークショップで新しいアイディアが出てきた時に「仮想空間」ならば参考画像よりもリアルな形で、イメージとして出すことができるようになるはずです。創造性を発揮する場面では、世界を超越する「仮想空間」という意味の「メタバース」の方が、これまで考えられなかったアイディアが出てくる可能性があると感じています。

小島:実は先日クライアントと同じような話をしました。Z世代などの新しい世代に対しては既存のインタビューではなく、ゲームの中で“あつ森インタビュー”“フォートナイトインタビュー”を実施した方がより本音を引き出せるのではないかという話です。もちろんまだまだアイディアレベルですが。

中村:フォートナイトを作っているアンリアルエンジンやUnityなどのゲーム開発エンジンを使うと、結構簡単に仮想空間のシステムが作れてしまう時代になってきています。そこに音声認識やその他いろいろなセンシング技術も融合していくと、例えば自分の姿を変えてもリップシンクのようにリアルに近い会話機能を加えることもできます。画面越しのオンライン会議では視線が合わなかったり、身振り素振りが伝わらなかったりしますが、仮想空間では非言語的なコミュニケーションがリアルを超越する別の形で実現できるようになるのではないかと思っています。

小島:ワークショップをオフラインで実施する場合は、すごく古くて汚い会議室で実施する場合と、きれいなホテルの宴会場で実施する場合とで確かに参加者の熱量の違いを感じていますが、デジタルの場合はその差異が良くも悪くも全くありません。VRなのか画面の中の「仮想空間」なのかはさておき、参加者の熱量が上がって、よりアイディアが発想しやすくなる方法があればいいなと思っています。
すでに自分の部屋にPCを置いて、そこから参加するということは日常になっているのですが、だからこそ同じ場所で非日常を作った時のインパクトがあるなと思います。ずっとゴーグルをしているのも疲れるかもしれませんが、将来的にはもっと発想を豊かにできるツールが作れるのではと考えています。PCの画面上に付箋を貼るのではなく、一つの共有された空間の中に、何か違う形の表現ができるとさらにいいなと。

中村:コロナ禍で人の移動が大きく変わりましたが、実はリアルで移動する必要のないことがたくさんあったのだと思います。仕事で言えば、対面が必要なもの、オンラインで済ませるもの、家で一人で済ませるもの、と選べるようになったということだと思います。同じように仮想空間で完結できるものが存在すると思います。現在はゲーム分野が主流ですが、仕事や日常も「仮想空間」で済ませられるものが実用化されていくのだと思います。ここにはビジネス的なエッセンスが入ってくると、すごく大きな産業規模になっていくだろうと感じます。

■新たな協業の可能性③「SDGs」

中村:協業させてもらっている音声認識アプリ「YYProbe」ですが、聴覚に障害をお持ちの方から評価をいただいています。音が聞こえにくい方はオンライン会議で音声だけで話されても困りますし、ビデオをOFFにされたりマスクをしていると口元が読めなくなりますので、音声を文字にするということがとても便利だと言っていただいています。この体験から、社会のデジタル化が進むと、便利になる一方、困る人達も出てくると思います。デジタル庁からも「誰一人取り残さないデジタル社会の実現」が打ち出されています。企業の中でもこういった問題は今後課題になってくると考えています。

小島:そうですね。そのような観点からも考えていかないと、「SDGs」の観点からも多くの方に使ってもらえるツールにはならないですよね。ここ1~2年はコロナ禍による急激なオンラインシフトが進み、それに対応することばかり考えていましたが、そろそろ取り組み方を切り替える時期にきているのかもしれませんね。

「言葉」をきっかけにアイシン様と(株)インテージクオリスで始まった協業。
今後も継続し、定性調査のデジタル化をさらに推し進めていこうと考えています。
アイシン 中村様、今回はご対談ありがとうございました。

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