自主調査
新型コロナウィルスの感染拡大が始まって今年で3年目となりました。日常では一時閑散とした街並みが広がり、感染対策のためにマスクが欠かせなくなる、密を避けるためのリモート飲みが広がるなど、生活に様々な変化をもたらしました。株式会社インテージクオリスでは、コロナ禍によって生じた意識や行動の変化を探るため、自主企画インタビューを実施しました。
インタビューは、インテージとの共同自主企画調査として実施したアンケート調査に回答いただいた中から10名の方を対象に行いました。
連載第3回目の今回は、30代女性、Cさんのインタビューの結果をご紹介します。
Cさんは埼玉県に住んでいる30代女性です。ご夫婦と4歳のお子さんの3人家族で、現在のお仕事は金融関連の事務。週のうち、出社とテレワークが半々くらいということです。
まず、コロナ禍で、生活のどのような点で変化があったかをうかがったところ、下記のとおり多岐にわたって変化があったとのことでした。
変化したことの中から「人付き合い・コミュニケーション」「働き方」「健康」について、具体的にどのような変化があったのかをうかがいました。
コロナ禍で友人に会う機会がなくなり、それに伴いLINEのコミュニケーションも減りました。以前は気軽にメッセージを送ったりしていましたが、外出機会が減ってお互いに話題がなくなったことからやり取りが減り、友人とは疎遠になってしまいました。そんな生活に次第に慣れてしまい、久々にメッセージを送るのもちょっと勇気がいるように感じられて、連絡をしなくなったそうです。
2021年の5月に転職をしたCさん。転職前は在宅勤務の制度がない上に、都心までの通勤時間が長く、勤務時間も不規則で、仕事と子育ての両立に疲れを感じていました。そこで、子育てと両立ができるように、テレワークができる現在の仕事に転職をしたそうです。
「働き方」と関係ありそうですが、「健康」の変化は体重増加。10kgほど増えたとのことです。テレワークができる仕事に転職し、職場も近くなって、以前のように都心まで通勤をする機会がなくなりました。さらに、テレワークに慣れてくると、仕事中におやつを食べる頻度が増え、運動する習慣も減ってしまったそうです。
以前はスポーツジムに通っていたのですが、コロナ禍でやめてしまいました。家で運動しようともしましたが、自宅では周りの目もないためモチベーションが上がらず、運動をしなくなったとのことです。
テレワークが増えたことで、出社する時以外はメイクもしなくなり、服もそのままで、だんだん私生活と仕事を切り替えられなくなっていきました。テレワークの日は、朝起きて机に座っても、仕事をやる気になるまで時間がかかるし、逆に時間外でも仕事関係のメッセージが来ると気になって見てしまったりしているそうです。
一見コロナ禍で望ましくない変化の方が多かったように見受けられるCさんですが、アンケートでは、「暮らしの充実度が上がった気がする」と答えていました。
「暮らしの充実度が上がった」というのは、一体どのようなことなのでしょう。インタビューではその点に注目して、お話をうかがいました。
Cさんご一家は、ちょうどコロナ感染が広がり始めた2020年の3月頃、以前住んでいた同じ市内のマンションから、現在の三階建て4LDKの戸建て住宅に引っ越しました。
仕事もテレワークが増えたことで、旦那さまは3階に、Cさんは1階に、それぞれテレワークのための専用の仕事部屋を作りました。
また、コロナ禍以前には、家族で頻繁に楽しんでいた日帰り旅行も、感染拡大以後は諦めざるを得なくなりました。家の中で過ごすことが多くなり、家族で出かけるといえば、近場の公園や大型スーパーくらい。行動範囲が狭くなってしまいました。
そこで、子供が家の中でも遊べるように、室内に置けるジャングルジムを買いました。
「暮らしの充実度が上がった」と感じる要因の一つ目は、家の中に遊具(ジャングルジム)を置いて、外へ出かけなくても子供が遊べる環境を作ったことでした。
さらに、テレワークで在宅時間が増えたことで、家の中で楽しめる趣味ができました。アロマオイルや、いい香りのスプレーを集めて、自分のテレワーク専用部屋で仕事をしながらでも、好きな香りを嗅いでいることが日々の楽しみとなりました。週の半分がテレワークになり、自分一人の部屋で、自分一人の時間ができ、一日中好きな香りを嗅いでいられる。この、一人の空間と時間を持てるようになったことが、仕事の時は仕事に集中でき、自分のことに時間を使うことができている「時間の余裕」という感覚につながったようです。その結果、気持ちに余裕が持てるようになりました。この「気持ちの余裕」が、暮らしの充実度が上がったという感覚につながっているのだそうです。
また、自分一人の時間だけでなく、家族で一緒に過ごす時間が多少増えたことも、気持ちの余裕につながり、暮らしの充実度が上がった要因の一つだということです。
もし、転職をせずワークスタイルが変わらないままでいたら、時間の余裕は生まれず、気持ちの余裕は持てず、現在のような暮らしの充実感は持てていなかったと言います。
コロナ禍での変化について、当初は一過性だと思っていたCさんですが、働き方が変わり、自分の暮らしに充実感を覚えるようになって、もはやコロナ前の生活には戻れないという考えになりました。
コロナ禍で「変化した」と回答した項目全てについて、今後コロナ以前のようには戻らないだろうとCさんは考えています。人付き合いも、直接会わずにLINEでコミュニケーションをしていくだろうと考えています。友達に会いたいという気持ちはある一方で、今が充実しているので「友達に会わなくても、別にいいかな」という考えに変わっていました。
健康面でも、以前のように体を動かすことはないだろうと考えています。友達と会う機会がほとんどないと考えているため、友達から体型の変化を指摘される機会はなく、人目を気にしてシェイプアップする意識がかなり薄れていました。ただ、体型というよりも健康のために、コロナが落ち着いたらスポーツジムにはまた行ってみたいそうです。
転職をして、一人の時間が増えて、勉強できる時間もできて、仕事の資格を一つ取得したCさん。実は旦那さまにも、Cさん同様、前向きな変化が起こっていました。時間の余裕が生まれたことで、Cさんだけでなく旦那さまも、夫婦それぞれが空いた時間に勉強をするようになったそうです。
そんなCさんが今後やりたいこととして挙げてくれたのは、もう一つ新たな趣味を持つことです。友人がガーデニングにはまって、ハーブを採って料理をする様子をSNSで発信しているのを見て、Cさんもそういう生活に憧れるようになりました。
コロナ禍で転職して在宅勤務ができるようになったことをきっかけに、仕事・プライベート両面で家の環境を整え、家で充実した時間を過ごすようになったCさん。気持ちの余裕が生まれて、暮らしの充実度が上がったCさんですが、現状に満足せず、ガーデニングなど自分の時間をもっと楽しめるようにすることで、もっともっと充実した暮らしを送っていきたいと考えているようです。
インテージクオリスは、以下の設計で実施した株式会社インテージクオリス・株式会社インテージの共同自主企画の調査結果を元に分析を行っています。