自主調査
サステナビリティやエシカル意識が高いと言われるZ世代。その実情をリアルに捉えるため、9人のZ世代にインタビューを行いました。第2回では、インタビュー対象者それぞれが、関心を持つ社会課題(図表①)を意識し始めてから今に至るまでの気持ちや行動の変化から、気持ちの上がり・下がりに影響する要因についてご紹介します。
※第1回の記事についてはこちら→Z世代におけるサステナブル行動の今 ~第1回 Z世代のサステナブル行動の特徴~ – 株式会社インテージクオリス (intage-qualis.co.jp)
※サステナブル行動セグメントについてはこちら→サステナブルな行動、どのくらいの人が行っている? ~生活者調査から見る、日本のサステナビリティの今① – 知るギャラリー by INTAGE
上がり・下がりには内的・外的要因が複合的に影響
それぞれの課題への関心が生まれてから定着するまでは、家庭環境、友人関係、学校・教育の中での関わり、社会の状況など内的・外的要因が複合的に影響していました(図表②)
まず、多くの人に関わる要因である「家庭」「学校・教育」について見てみましょう。
気持ちが上がる要因として影響力が大きいのは「親・家庭」です。何かを「考える」以前に親の価値観が刷り込まれて内面化したり、親と行動をともにすることで自身の関心が育ったりしていました。
授業でSDGsや「戦争」「貧困」などのテーマが取り上げられることで、「そういう問題があるんだ」と知ったり、自分の環境との違いに衝撃を受けるなどして、「学校の授業」は課題を認識するきっかけとなっていました。しかし、その関心や衝撃は一過性で終わることも少なくありません。
カリキュラムに組み込まれているためほぼ全員が通る道となっていますが、小学校時代から授業で取り上げられることがサステナブルな価値観や態度の内面化につながるか、「お勉強」と捉えてしまうことで日常生活との距離を生んでしまうことがあるのかについては、今後も注視していく必要がありそうです。
せっかく芽生えた関心も、受験のときには優先順位が下がってしまいます。反対に、総合型選抜(旧:AO入試)で受験する場合には、入試対策の一環として社会課題に取り組むことで関心が高まっていました。AO入試をきっかけに社会課題に関心を持つようになった大学生は、「『AO入試を受けるんだったら社会問題について知らなきゃいけないよね』から始まるので、義務感スタート」と言いつつも、取り組んでいくうちに色々なものに目が向くようになり、問題意識が生まれてきたと語ってくれました。
自身や身近に感じる人が当事者になったり、課題を目の当たりにするなど、自分ゴト化したり実感を伴う経験があると、「解決しなければならない」「何とか助けになりたい」と内発的な動機が生まれて関心が高まっていました。今回インタビューした9名の中でも「祖父母の介護の経験から超高齢化問題が身近になった」「紛争を逃れてペルーから来た友だちの話を聴いて戦争が本当にあるんだと感じた」といったエピソードが聞かれました。
しかし、こういった実体験や実感を伴う経験を誰もがしているわけではありません。実体験はなくとも、メディアやコンテンツで接触することで気持ちが上がることもあります。「ウミガメの体から大量のプラスチックが見つかったというテレビ番組を見て興味を持ち始めた」というように関心の入り口となる場合も見られましたが、それ以外にもメディアやコンテンツが重要な役割を果たしている例が見られました。
メディアで繰り返しある社会課題が取り上げられている場面に出会うことで、その課題が「世の中でメジャーになっている」「世の中が重要な問題として認定している」と感じ、気持ちが上がったり高止まりしたりしていました。
例えば、気持ちが下がっているときに、レジ袋有料化のニュースを見て「社会的に環境に配慮することが進んでいるのかな」と感じてまた気持ちが上がったというエピソードが聞かれました。このようにメディアを通して外部から「承認」されることで、「やっぱり重要な問題なんだ」と自分が取り組む意義を見出したり、行動を意識する後押しとなるようです。
直球で「社会課題」を扱っているメディアやコンテンツ以外でも、自分が「好きなこと文脈」の中で「偶然」社会課題を扱ったコンテンツに遭遇すると、スムーズに関心につながる様子が見られました。
「偶然の出会い」は、Z世代を想定した新しい消費者行動モデル「EIEEB」の最初のステップ「Encounter(主にインターネット上の膨大な情報から、商品・サービスの情報に偶然触れる)」ともなっていますが、サステナブル行動においても、同様に入口は「偶然の出会い」が効果的なのかもしれません。
※「EIEEB」モデルについてはこちら→Z世代・アルファ世代のリアル-テックネイティブな未来の消費者を紐解く②~テックネイティブの消費者行動モデル – 知るギャラリー by INTAGE
関心のあるテーマ/社会課題に知識を深めたところで、壁にぶち当たる人も見られました。例えば生物多様性に関心のある大学生は、「問題があまりに大きすぎて自分ひとりでどうにかできることではない」と無力感を抱いていました。行動をしている人でも「何も変わらないかもしれないけど、いい影響になればいいな」「(行動をした先でも)何も変わらない」と自己効力感の低さが目立ちました。
そのように無力感を抱いている中で、解決に近づけるためには「協力」することが大事という声が聞かれました。「環境面はみんなで協力して対処していく(ことが大事)」「社会問題は、自分(だけ)がすごく頑張ったりしても意味がない。協力、自発的に動く人がいればいるほど解決していく」と大学生たちが話してくれました。
ただし、「仲間」を見つけることは容易ではなさそうです。自身の関心のあるテーマについてまわりと話すかどうかを聞いてみると、全員が「特に誰かと話すことではない」または「親や親友など限られた人としか話さない」と言っていました。図表③で示したとおり、自分に最も近い存在である家族や、自分をよく理解してくれる親友、サークルや学部の仲間など興味・関心を共有していると分かっている友だちには話せるものの、それ以外の友だちにはたとえ仲が良くても「話さない」とのことでした。その背景には、相手にとって関心のない話題を出して気まずくなりたくないとか、意見が違う場合に雰囲気が悪くなるのはイヤだという気持ちが見られました。
社会課題はみんなで協力して解決していくものという気持ちは持っているものの、実際には協力に向けて仲間の輪を広げていくことは理想論に近い状態でした。興味・関心を共有している仲間は、行動を後押ししたり、知らなかった社会課題に視野を広げたりする存在となっている様子も見られました。仲間の輪を広げやすい状態を作るには、サステナビリティが「メジャーな関心事」としてまわりと気軽に話せる話題になることが重要となりそうです。