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調査⼿法

「n=1」 たった一人を深掘りして、生活者行動・意識の新たな兆しを分析する

2020.11.11
株式会社インテージクオリス リサーチ&インサイト部

【n=1とは】

 このサイトをご覧になっているマーケティング担当者の方は、「n=1」という言葉を聞いたことがある、もしくはもっと深くご存じの方も多いかもしれません。今回は、そんなn=1についてご紹介します。

 マーケティングでは、数千、数万というまとまった数のユーザーの意見を集めることが基本と思われがちですが、一方でたった一人のユーザーの声が、その商品やサービスに足りないものや、伸ばすべきところの本質を言い当てていることが多いという意見も多々見られるようになってきました。

 今回は、具体的な分析手法は割愛しますが、n=1、すなわち個人に集中することで本質的な課題が確認できたり、新しい角度から仮説やアイデアの芽を発見できたりする分析方法として注目され始めています。さらに、集団を分析する従来の分析方法と組み合わせることで、ターゲットにしたい顧客についてより深く知ることができます。

【インテージクオリスが考える、「n=1」を深掘りする意味】

 そんな可能性が拡がるn=1を深く理解しようというプロジェクトが、インテージクオリスでも始まっています。インテージクオリスでは、インテージと共同で、感度の高い生活者を対象に日記調査を実施。20代独身層、30-40代ファミリー層、60代以上のアクティブシニア層を対象に、このコロナ禍でポジティブな行動変容をした人たちを深掘りすることで、ニューノーマルの生活様式の中で今後も続いていくであろう変化の“兆し”を捉え、新商品やサービス開発のヒントを見出そうという試みです。今後、本WEBマガジンでも、n=1の深掘りをすることで見いだされる“兆し”をご紹介していきます。

 実施期間中、調査対象者には同時並行で2つ「タスク」を依頼しています。1つが、日常の生活で嬉しかったり、悲しかったり、ちょっと不満に思ったりしたことについて、何があったのかについて、日記形式で毎日エピソード(と写真)を投稿してもらうことです。

 もう1つは、毎週出している「2020年夏の思い出」「秋を感じたできごと」といったお題について、ご自身の経験・気持ちを表すエピソードと写真を投稿してもらうことです。日記からは日々の気持ちの変化が見て取れ、お題からはその人のオリジナリティー溢れるエピソードトークが展開されているので、なんとなく人柄を想像したりして、ついついこちらで人物像イメージを膨らませたりししながら、日記やお題を拝見しているところです。

日記の写真・コメントから見える生活者の気持ち

 改めて日記を眺めると、“天気”“自然”“植物(草木や花)”に対して心を動かされている投稿の多さに驚きます。天気の良し悪しは、普段の外出や家事などに影響が出ることから、自然と出やすい内容ではありますが、天気そのものの事象を含め、例えば、秋晴れの日差し、庭に咲いた朝顔、その日感じたひんやりした空気など、自然界の営みから「癒し」の気持ちを味わっている人が多く見られました。おそらく、コロナ禍でなくともある程度出てきた内容だと思いますが、それまで当たり前に機能していた社会的なシステムが、コロナによってガラッと大きく変わらざるを得ない状況になり、少なからず個々人に衝撃を与えているのではないかと思うのです。そんな状況でありながら、不変のものとして日々有り続ける自然に、通常時よりも絶対的な安心感を感じ取っているのでは?と思ってしまいます。そんな自然の営みを愛でながら、身近な自然が明日への活力・小さな幸せとして作用する力が増しているように思えてなりません。

    ■日記写真とコメントの一例

▲20代独身層:「有給休暇をとって長瀞に出掛けた。いい天気と自然で癒された」
▲ファミリー層:「今朝の空も綺麗」
▲シニア層:「夏の暑さで、開花しなかった白の朝顔が咲き始めた。葉を見ると暑さに痛めつけられていることがわかるがそれでも咲く事はとても嬉しい」

日記のエピソードから見える興味深い生活者像

 まだ始まったばかりではありますが、日記調査の中から見えた、興味深いなと思ったエピソードをひとつ。シニア層のn=1で、とにかくありとあらゆる方向に趣味が向いていて活動的な方がいました。食べることやお酒が好きで、ちょこちょこ飲食に関する記事は出てきます。その合間に、一人カラオケ、英会話、スポーツジム、旅行、映画に美容関連…どうやらお仕事もされているようですが、パートタイムジョブで自由時間がたくさんあるのかもしれません。だとしても、これだけ精力的にこなすには、並大抵のパワーではないはず…。体力がある一番若い層として、20代独身層の日記も同様に眺めていますが、これだけ活動的な20代はお見掛けしていません。確かに、このシニア世代はバブルも経験し、お金の使い方も遊びも豪快にできる方が多いのかもしれませんが、これだけ活動していても日記の中に、“今日は自宅でゆっくり”というようなインドアな記事は一切出てきません。他のシニアには、「雨だから自宅でゆっくり」など出てきているのですが、この方の場合は恐らくずっとこのペースで趣味に仕事と忙しくしてこられたのではないかと感じます。(ライフステージによってセーブせざるをえないことはあったかもしれませんが)それまでやってこなかった方が、一気に増やすと途中で息切れしてしまうと思いませんか?こんな方が、世の中の商品やサービスのどんな部分に反応するのか、楽しみですね。n=1の日記調査では、視点によって本当にいろんな気づきが生まれます。

 これはほんの一例にすぎませんが、見る人によって、様々な見方ができ、2倍にも3倍にも活用できる可能性のあるインテージクオリスのn=1プロジェクトに、今後もご期待ください!

 尚、11/17(火)~20(金)に開催される「インテージフォーラム2020」で、弊社のリサーチディレクター・小関久美が、「N-1分析から読み解く、新しい生活者意識の兆し」と題して講演を行います(11/17)。下記のリンクから、ぜひお申込みください。

https://www.intage.co.jp/forum2020

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