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自主調査

ママのコロナ禍における”食”の楽しみ方の変化 <n=1プロジェクト>

2021.06.30
株式会社インテージクオリス リサーチ&インサイト部 リサーチャー 出野 舞

 早いもので2021年も半ばに差し掛かりました。沖縄県以外では3度目の緊急事態宣言が終わり全国的にワクチン接種の拡大が進んでいるものの、感染者数はまだ多い状況です。オリンピックの開催も控える中、コロナによる影響はまだまだ収まりそうにありません。私たちの生活も”元通り”とはいかず、今の生活に適応した新しい商品やサービスがどんどん出てくる中で、さらに変化し続けているのではないでしょうか。

 インテージクオリスでは、1人の生活者の行動や気持ちを理解すること(n=1分析)により変化の”兆し”を捉え、新しい商品やサービス開発のヒントを見出そうという試み、<n=1プロジェクト>を実施してきました。コロナ禍でもポジティブな行動変容をした方を対象に日記調査を実施し、その中でも特にニューノーマル時代の生活者像の理解を深める上で興味深い投稿をしていただいた5名の方に、オンラインによるデプスインタビューにご協力いただきました。

 今回記事にさせていただいたのは、専業主婦のEさん(44歳・女性)。コロナ禍でパンやスイーツ作りをする人が増えたと言われていますが、Eさんもその1人です。実際のところ、なぜパン・スイーツ作りを始めたのか。食生活においてどのような変化があったのか。リアルな生活者意識を探ってみようと思います。

日記調査は”食”の記録が多かった

 Eさんにも、日記調査で約3ヶ月間に渡り日々の出来事を投稿していただきました。ご本人も「楽しかったです。食べ物ばっかりになっちゃいました」とおっしゃっていたように、その多くが”食”に関する記録でした。

Eさんの日記調査の記録(一部抜粋)

 手作りパン・スイーツだけではなく、ケーキ屋さんやスーパーで買ってきたスイーツ、家族と食べるテイクアウトや外食、ママ友ランチなど楽しい気分の投稿が多い中、毎日残り物でお昼を済ましているという少しテンションが低めの投稿もありました。

 これらはEさんにとってどのような意味を持つのか。デプスインタビューにより、それぞれの価値観を明らかにしていきます。

自身と家族の”食”の好み

 まずは、インタビューから見えてきたEさんのご家族について、今回のテーマである”食”を中心にご紹介します。

Eさんのご家族

 

 Eさんは日記投稿では食の投稿が多かったものの、自分で料理をすることは「大好き」というほどではなさそうです。また、Eさん自身が食べることが好きだとしても、自分の好みを優先するとき家族の好みを優先するときがあることがうかがえます。

コロナ禍でのネガティブをポジティブに切り替える

 コロナ禍で制限されたこと、ネガティブな方に変化したこととして、以下のような話が出てきました。

Eさんへのインタビューより(一部抜粋、以下同様)

 これだけを見ると制限されたことが多く、ストレスを抱えているように感じられますが、Eさんはどのようにしてポジティブに切り替えていったのでしょうか。楽しみ方のタイプで分けてみると、同じ”食”でもそれぞれ価値観の違いがあることが見えてきました。

自分も家族も楽しむ

自分自身が楽しむ

家族が楽しむために自分は我慢する

 

 自分を犠牲にして家族の楽しみを優先するところもありつつ、自分もストレスを溜めないよううまく楽しみを見つけて息抜きをしている様子がうかがえました。また、例えば今回の袋麺のように、コロナ禍で消費が伸びていると言われている商品で、購入しているのは変わらず主婦の方であったとしても、実際に食べる人やタイミング、気持ちの変化までを捉えることができるのは、定性調査ならではかもしれません。

最後に

 これまで5名の方のn=1分析記事を掲載してきましたが、コロナ禍でもポジティブな行動変容をした方々には、以下のような共通点がありました。

  • 「できなくなった」で終わらせず、「今できる範囲でできることをやる」という意識を持つ
  • コロナ禍でもできる、新しい趣味や楽しみを見つける
  • 家族とは別の、自分自身の時間・楽しみを見つける
  • 交友関係は今後も保ちたい人だけに絞り、人間関係のストレスを減らす(Cさん・Eさん)

 今回記事にさせていただいたEさんも、他の4名と同じく「今できる範囲で」という言葉を何度か発言されていました。コロナ禍で負担が増えてはいるけれど、家族のことをいちばんに考え、でも自分にもご褒美与えつつ楽しもうという価値観は、これからの商品・サービス開発だけではなく、個人の生活においても何かヒントが得られるのではないでしょうか。

 これからも、インテージクオリスでは日々変わる時代の流れを読み解き、未来のヒントを探る調査を続けてまいります。


(調査実施概要)

 今回の分析は、下記の設計で実施した株式会社インテージクオリス・株式会社インテージの共同自主企画の調査結果をもとに行いました。

  • 調査実施日:2020年12月13日・14日
  • 調査対象者:一都三県在住の20~70代男女5名
  • 調査手法:デプスインタビュー(オンライン) ※WEB環境を利用し、会場に集まらなくても任意の場所からオンラインでインタビューを行う手法です。自宅でインタビューを行うケースが多く、リラックスして参加できるので、よりリアルな消費者の声がみえてきます。
  • 調査主体:株式会社インテージクオリス・株式会社インテージ

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