自主調査
新型コロナウイルスの感染拡大から新たな「ニューノーマル」時代が始まって、早くも1年が経とうとしています。刻刻と変わる状況に応じて新しい「常識」や「マナー」が生まれたり、人付き合いのあり方、家族との向き合い方、仕事の仕方などにさまざまな変化が見られます。2021年の生活者は、これからどのように変化していくのでしょうか。
インテージクオリスでは、2020年9月から12月にかけて、自主調査として<n=1プロジェクト>を実施しました。1人の生活者(n=1)の行動や気持ちを理解することで変化の”兆し”を捉え、新しい商品やサービス開発のヒントを見出そうという試みです。
コロナ禍でもポジティブな行動変容をした方を対象に日記調査を実施してきましたが、その中でも特にニューノーマル時代の生活者像の理解を深める上で興味深い投稿をしていただいた5名の方に、オンラインでのデプスインタビューを実施。リアルな生活者意識を探りました。
1人目は、Aさん(42歳・女性)。
専業主婦の方で、夫、今春から小学生になる6歳の息子、4歳の娘と同居しています。Aさんには、約3ヶ月間に渡る日記調査の中で日々の出来事を綴っていただきましたが、記録の多くが「子供の成長」に関するものでした。
2020年3月から始まった一斉休校以来、幼稚園や学校の行事が中止になったり、友達との遊び方や家族での過ごし方でも行動が制限されたりと、コロナ禍で子供の成長の機会をどうやって作っていくかに心を砕いている親御さんは多いのではないでしょうか。
上記はAさんの日記のほんの一部ですが、この記録からは、制限がある中でも前向きに楽しみを見つけたり、子供たちが様々な経験をする機会を作ったりと、ポジティブな行動をしている様子が見受けられました。
そんなAさんへのインタビューから、子供の成長を軸にニューノーマル時代をポジティブに生きるヒントを考えてみたいと思います。
まずは、Aさんのお話から、ご家族4人のキャラクターを簡単にまとめました。
ご家族に関しても性格や日頃の過ごし方のポジティブな面を描写してくれたAさんですが、「コロナ禍」に焦点を絞ったときにAさんのマインドの特徴として浮かび上がったのは、過度に恐れるのではなく、制限がある中でも前向きに、できることは積極的に、最大限に楽しむというものでした。
このマインドの背景を、①環境 ②行動原理 の2つの面から深掘りしていきたいと思います。
まず、過度に恐れず、出来ることを見つけて積極的に行動できている背景には、Aさんのコミュニティの中で「実体験」としてコロナが発生しているわけではないということが大きく関わっていると考えられます。
Aさんは現在も自分の地元にご家族と暮らしており、実家や幼稚園も近く、息子の友達が遊ぼうと呼びに来るほど近所の方々とも交流があったりと、地元とのつながりが深い様子でした。インタビューの中では、「まわりに感染者がいない」と発言されていたのですが、Aさんのコミュニティの中で発生していないということで、気を付けなければならないが、楽しみは楽しみとして諦めない(制限のある範囲で最大限楽しむ)というマインドになっているのではないでしょうか。
Aさんは、「自分自身が楽しみたい」という気持ちを持ち、そして実際に日常の小さなことにも喜びや楽しみを見出せる方であることも背景にあると考えます。
自分自身が「楽しみ」を大事にしているからこそ、子どもにも楽しい経験をさせてあげたいと考え、それゆえに、「できない」と諦めるのではなく、「ここまでならできる」ことを見つけようというマインドになっているのではないでしょうか。
Aさん自身が旅行に意義を見出しており、子供にもその体験をさせてあげたいという気持ちが伝わります。我慢はするものの全くやらないのではなく、コロナ禍で出来る最大限のことは何かと考えて、貸別荘やグランピングでの経験を一緒に楽しんでいるようでした。
思うように行動できないことに不満や不安はありつつ、感染対策と自分のやりたいこと、子どもたちに体験させてあげたいことのバランスを取っている様子が見受けられます。これまでAさん自身が行事を楽しんできた分、子供にも同じように思い切り楽しむ経験をしてほしいのではないかと推察します。
幼稚園が休園したときも、当初は不安な気持ちを抱えていましたが、結果的に子供の成長を間近で見られる機会になったと前向きに捉え直していたようでした。
Aさんの日記の記録やインタビューからは、
というように、前向きに日々の暮らしを楽しみ、子供の成長を促す機会を作っていくヒントがあるのではないでしょうか。
今後も、インテージクオリスでは、n=1を深く理解することで、商品やサービス開発の芽を見つける取り組みを行ってまいります。次回のマガジンでは、アクティブシニア層のBさん(67歳・女性)の深掘りを掲載いたします。
今回の分析は、下記の設計で実施した株式会社インテージクオリス・株式会社インテージの共同自主企画の調査結果をもとに行いました。